パーオキシル・ラジカル産成系による脂質過酸化に対する喫煙水溶性抽出物の抑制作用

喫煙物質には様々なラジカルが存在し, 生体系に対し酸化的に作用すると考えられてきた. 今回, 喫煙中に含まれる物質のうちクレブス・リンゲル液中にトラップされた物質を喫煙水溶性抽出物(CSE)とし, CSE自体およびラジカルによる脂質過酸化作用への影響を検討した. ウィスター・ラットの大脳皮質より調整した神経終末シナプトゾーム膜(P2)分画, 洗浄ヒト赤血球膜, 卵黄から精製されたLDLに, CSEやパーオキシル・ラジカル産成体であるアゾ化合物(ABAP)を反応させ, 生成された脂質過酸化体をチオバルビツール酸反応物として定量した. CSE単独では, 赤血球膜やLDLの脂質を高濃度で酸化したが,...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1997, Vol.109 (2), p.1081-1081
Hauptverfasser: 上崎善規, 和田孝一郎, 中本健太郎, 岸本洋輔, 芦田久美代, 伊藤忠雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:喫煙物質には様々なラジカルが存在し, 生体系に対し酸化的に作用すると考えられてきた. 今回, 喫煙中に含まれる物質のうちクレブス・リンゲル液中にトラップされた物質を喫煙水溶性抽出物(CSE)とし, CSE自体およびラジカルによる脂質過酸化作用への影響を検討した. ウィスター・ラットの大脳皮質より調整した神経終末シナプトゾーム膜(P2)分画, 洗浄ヒト赤血球膜, 卵黄から精製されたLDLに, CSEやパーオキシル・ラジカル産成体であるアゾ化合物(ABAP)を反応させ, 生成された脂質過酸化体をチオバルビツール酸反応物として定量した. CSE単独では, 赤血球膜やLDLの脂質を高濃度で酸化したが, P2分画の過酸化脂質形成はむしろ抑制した. また, ABAP(50mM)は37℃でのインキュベーションにより, 過酸化脂質形成を3~4倍に増加したが, これに対してもCSEは濃度依存的に抑制し, その作用は1,000倍希釈液でも認められた. しかし, この抑制作用はニコチン(1mM)では認められなかった. またこのCSEの作用は1週間保存しても変化しなかった. 喫煙により生成される物質の内, CSEのような水溶性物質は循環血中に入り全身に作用する可能性が考えられるが, 以上の結果は, CSE自体が酸化作用を示すのみならず, ラジカルの脂質過酸化作用に拮抗する可能性が示唆された.
ISSN:0015-5691