8.骨吸収抑制薬への応用を目指した解熱性鎮痛薬の研究

【目的】 非ステロイド性抗炎症薬の代表薬剤であるジクロフェナックナトリウム(DIC)には, 骨吸収抑制作用を伴った一過性の低Ca血症を惹起することおよびヒト閉経後骨粗霧症治療薬としての臨末応用が報告されている. 本研究ではこの骨吸収抑制機序を解明する目的で破骨細胞の形成・分化過程における影響を検索した. 【材料と方法】造血幹細胞は5~8週齢のddYマウスの大腿骨および腫骨から採取した骨髄細胞をSephadex G10カラムを通過させて得た. この細胞を培養開始時からαMEM培地 (15%FBS, 20ng/ml CSF-1, 60ng/ml RANKLを含む)に24穴プレートまたは象牙片上に播...

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Veröffentlicht in:昭和歯学会雑誌 2007, Vol.27 (1), p.55-83
Hauptverfasser: 唐川亜希子, 岡崎雅子, 天野均, 山田庄司, 府川有紀子, 佐野恒吉
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】 非ステロイド性抗炎症薬の代表薬剤であるジクロフェナックナトリウム(DIC)には, 骨吸収抑制作用を伴った一過性の低Ca血症を惹起することおよびヒト閉経後骨粗霧症治療薬としての臨末応用が報告されている. 本研究ではこの骨吸収抑制機序を解明する目的で破骨細胞の形成・分化過程における影響を検索した. 【材料と方法】造血幹細胞は5~8週齢のddYマウスの大腿骨および腫骨から採取した骨髄細胞をSephadex G10カラムを通過させて得た. この細胞を培養開始時からαMEM培地 (15%FBS, 20ng/ml CSF-1, 60ng/ml RANKLを含む)に24穴プレートまたは象牙片上に播種し, 6~9日間培養した. TRAP染色により破骨細胞形成に及ぼす影響と, 反射電子像により骨吸収能を検討した. 細胞質中のIχBと核蛋白のNF-χB(p65)の量をウエスタンブロット法で, また破骨細胞でのカテプシンK mRNAの発現をPCRにより, DIC添加#非添加群で比較検討した. 【結果】DIC添加群において濃度依存的かつ統計的有意にTRAP陽性多核細胞数と骨吸収能が減少し, 破骨細胞形成#分化は抑制されたことが明らかとなった. また破骨細胞形成抑制はIC50が200μMであったのに対し, 骨吸収能はさらに低い濃度である100μMで完全に抑制され, 10μMでも顕著に抑制された. DICは破骨細胞の核内でのNF-χB転写活性を直接抑制すると同時に, 破骨細胞の分化マーカーであるカテプシンK mRNAの発現も抑制した. 【考察】本実験で, DICは破骨細胞に対して濃度依存的に形成#分化およびNF-χB活性を抑制した. NF-χBは破骨細胞形成に重要な核内転写因子であること, またこの活性は非ステロイド抗炎症薬により活性阻害を受けることが報告されている. 破骨細胞においても同様の機序により, 最終的に骨吸収が阻害されたものと考えられた. 【結語】ジクロフェナックナトリウムは鎮痛効果以外にも, NF-κBを抑制することによる骨吸収抑制効果もあることが示唆された.
ISSN:0285-922X