遺伝子パネル検査の展望と課題

2019年6月にいよいよがんゲノムプロファイリング検査が保険収載され,今後,標準治療終了後のがん患者さんの治療選択肢を拡大することを目的とした検査が広く展開されることになった.この検査は,過去の手術や生検などによって採取された組織標本からゲノムDNAを抽出し,治療薬決定の参考となる遺伝子を中心に,数百程度の遺伝子を対象として変異解析を行うものである.これは,様々な分子標的治療薬が開発・実用化されていることと強く紐づいて実施される検査ということになるが,保険診療として行われる以上,他のあらゆる臨床検査と同じく,検査精度の確保が重要である.とりわけ,検査前プロセスと称される,組織の採取やホルマリン...

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Veröffentlicht in:日本輸血細胞治療学会誌 2019/10/25, Vol.65(5), pp.777-781
1. Verfasser: 松井, 啓隆
Format: Artikel
Sprache:jpn
Schlagworte:
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:2019年6月にいよいよがんゲノムプロファイリング検査が保険収載され,今後,標準治療終了後のがん患者さんの治療選択肢を拡大することを目的とした検査が広く展開されることになった.この検査は,過去の手術や生検などによって採取された組織標本からゲノムDNAを抽出し,治療薬決定の参考となる遺伝子を中心に,数百程度の遺伝子を対象として変異解析を行うものである.これは,様々な分子標的治療薬が開発・実用化されていることと強く紐づいて実施される検査ということになるが,保険診療として行われる以上,他のあらゆる臨床検査と同じく,検査精度の確保が重要である.とりわけ,検査前プロセスと称される,組織の採取やホルマリン固定,および核酸の精製過程が検査精度の良否を決めることになるため,多職種が協力して高品質な試料の準備に努めなくてはならない.一方,がんプロファイリング検査において,分子標的治療薬の感受性ないし抵抗性の参考となる遺伝子変異の検出率は高いものの,治療に結び付く症例,とくに保険診療下での治療が実施できる例は,現状ではごく限られている.この点をどう解決していくかが,この検査の有用性を高めるためのこれからの課題になる.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.65.777