輸血後C型肝炎が疑われた一症例

心臓手術後2週頃からAST, ALTが上昇し, HCV抗体検査が陽転した症例に遭遇した. 直ちに日赤に副作用発生を報告, 供血者の精査を依頼した. 術後3週時の結果も陽性であったため, 臨床サイドでは輸血後のC型肝炎と診断し, 院内感染防止の対策を講じた. しかし, その後の精査の結果, 検査結果は疑陽性であることが判明し, 検査結果報告の精度管理の在り方が問題となった症例を経験した. 【症例】生後3ヶ月の患者は, 心室中隔欠損症の手術時に日赤人全血液を2単位輸血した. 他院にて出生しているため, 出生時に凝固因子製剤および免疫グロブリン製剤の使用が無かったこと, そして術中, 術後の未使用も...

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Hauptverfasser: 粟野文剛, 八木和世, 遠藤成子, 風間あきみ, 工藤波留美, 小本美奈, 西田陽, 冨永誠一
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:心臓手術後2週頃からAST, ALTが上昇し, HCV抗体検査が陽転した症例に遭遇した. 直ちに日赤に副作用発生を報告, 供血者の精査を依頼した. 術後3週時の結果も陽性であったため, 臨床サイドでは輸血後のC型肝炎と診断し, 院内感染防止の対策を講じた. しかし, その後の精査の結果, 検査結果は疑陽性であることが判明し, 検査結果報告の精度管理の在り方が問題となった症例を経験した. 【症例】生後3ヶ月の患者は, 心室中隔欠損症の手術時に日赤人全血液を2単位輸血した. 他院にて出生しているため, 出生時に凝固因子製剤および免疫グロブリン製剤の使用が無かったこと, そして術中, 術後の未使用も確認した. 術後2週頃から肝機能の亢進がみられたため院内ブランチラボにHCV抗体検査を依頼した. 【検査結果】患者AST値は, 術前42IU/リットルが術後2週間後に504IU/リットルに, ALT値は15IU/リットルが482IU/リットル, LDHは736IU/リットルが1044IU/リットルとなった. 術後2週目と3週目のHCV抗体検査(EIA法;D社)の結果は陽性であった. 部内に保存されていた術後2週目の患者検体を他社キット(K社)にてEIA法で再検査した結果, 陰性であった. EIA法の偽陽性反応を疑いHCV関連マーカーも追試したが, 献血者も含めPHA法, PA法, PCR法は陰性であった. Hcv-II阻止試験の結果も陰性であった. 【考察】D社のEIA法における検体の吸光度は, カットオフ値に比べ僅かに高い程度であった. 結果を報告するにあたりEIA法には非特異反応がみられ疑陽性反応を呈することも有り得ること, そしてC型肝炎ウィルス感染の確定には他の検査法による確認が望ましい旨のコメントを添付して臨床に報告すべきと思われる. 精査不足による誤報告が, 献曲者や日赤に不必要な負担をかけ検査精度の信頼性にも影響を及ぼす結果となった, 登録衛生検査所の指導監督医, そして精度管理責任者は検査結果の“報告書の重み”を充分認識して精度, 信頼度を維持すべきである.
ISSN:0546-1448