交差試験で検出したBombay型(Oh)の1家系

〔目的〕子宮筋腫の手術のため入院した40才の女性の入院時の型判定は, 表検査O型裏検査O型, しかし交差試験の主試験で生理食塩水法, 酵素法において自己血球を除く全ての血球と反応する抗体が検出された. 精査の結果, 極めて稀れなOhと判明した. その性状を報告する. 〔材料及び方法〕材料:患者とその家族の血液と尿, 献血者の血液及びその他の試薬は市販品を用いた. 方法:血清学的方法は成書に, Transferaseの測定は瀬尾らの方法で行なった. 〔成績〕発端者既往歴:昭和55年に心弁膜置換手術, その際輸血を受けた. 昭和60年7月子宮筋腫のため入院した. 2回の出産と2回の流産を経験してい...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1986, Vol.32 (2), p.209-209
Hauptverfasser: 瀬下秀幸, 玉木啓子, 丸山裕幸, 大田智, 白鳥文夫, 傳田宇平, 松下文一, 安西信行, 瀬尾たい子, 大久保康人, 山口英夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:〔目的〕子宮筋腫の手術のため入院した40才の女性の入院時の型判定は, 表検査O型裏検査O型, しかし交差試験の主試験で生理食塩水法, 酵素法において自己血球を除く全ての血球と反応する抗体が検出された. 精査の結果, 極めて稀れなOhと判明した. その性状を報告する. 〔材料及び方法〕材料:患者とその家族の血液と尿, 献血者の血液及びその他の試薬は市販品を用いた. 方法:血清学的方法は成書に, Transferaseの測定は瀬尾らの方法で行なった. 〔成績〕発端者既往歴:昭和55年に心弁膜置換手術, その際輸血を受けた. 昭和60年7月子宮筋腫のため入院した. 2回の出産と2回の流産を経験している. 検査成績:(表検査)型判定はO型であるが抗Hレクチン(-), ウナギ血清(-), Oh型のヒト血清3例と反応しなかった. (裏検査)自己血球, Oh血球2例を除く他の血球と反応した. その抗体価はO型血球に対して生理食塩水法64倍, 酵素法4倍, 2MEの低抗性は認めなかった. (Transferase=Tfと略)血清中のTfはO型血球を用い抗Hを吸収後測定した. 尿は限外濾過後測定したがいずれもA, BのTfは認めなかった. (唾液)A, B, H型物質は認めなかった. (その他の血液型)Le^(a+b-) 以外特記すべき所見を認めなかった. (家系調査)発端者の同胞に同型はなかった. 発端者の両親は近親婚を否定した. 発端者と夫O型との間に5名の子供がいるが全てO型. 〔考察〕今回我々は交差試験の主試験で検出された抗体の同定から発端者は稀れな血液型Ohと判明した. 発端者はLe^(a+b-)の非分泌型であった. しかもOhのヒト血清と反応しなかつたことからRace & SangerのRowIと考えられる. 更に発端者の血清, 尿中にTfは存在していなかつたのでO型のBombay型と思われる. この成績は発端者の家系調査の結果と一致した. 発端者はH座のまれな対立遺伝子hのホモ接合体による血液型と考えられる. 発端者は輸血しないで手術に成功して無事退院した. それにしても前回の輸血で血液の破壊が全く認められなかったのはどのように説明すればよいのであろうか.
ISSN:0546-1448