“低体温法による体外循環臨床例の血液凝固系の変化”へ補足

われわれは比較的重篤な心疾患や胸部大動脈瘤, 頭蓋内動脈瘤など17例に熱交換器をもちいて急速冷却し, 最低温15-24℃の低体温灌流を行なった. その内11例は低分子量デキストランを20%添加して行ない, これを常温灌流群と凝血学的に比較検討した. ヘマトクリット値は術前高値を示す症例が多いため, 術後もかなり上昇している. 血小板数は術中約1/5に減少し, 術後の回復は常温灌流群にくらべ遅延している. 凝固時間は体温のafter dropの著明な2例にかなり延長をみたが, 他は正常範囲内にある. トロンボプラスチン生成試験では, 術後血小板因子活性の低下がもっとも強い. プロトロンビン活性は...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 1965, Vol.12 (1), p.133-133
Hauptverfasser: 志水浩, 河合進, 重本弘定, 津田弘純, 中矢良一, 大本武千代
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:われわれは比較的重篤な心疾患や胸部大動脈瘤, 頭蓋内動脈瘤など17例に熱交換器をもちいて急速冷却し, 最低温15-24℃の低体温灌流を行なった. その内11例は低分子量デキストランを20%添加して行ない, これを常温灌流群と凝血学的に比較検討した. ヘマトクリット値は術前高値を示す症例が多いため, 術後もかなり上昇している. 血小板数は術中約1/5に減少し, 術後の回復は常温灌流群にくらべ遅延している. 凝固時間は体温のafter dropの著明な2例にかなり延長をみたが, 他は正常範囲内にある. トロンボプラスチン生成試験では, 術後血小板因子活性の低下がもっとも強い. プロトロンビン活性は術前術後に低値を示すが, 術中はなお減少し, その回復には3-5日を要する. フィブリノーゲン量は常温灌流群と同様の変化. でやや減少するが, 臨界値以下に減少した例はない. TEGのr+kは術中延長し, maは減少する. トロンビン凝固時間は, 術後1-6時間は延長し, 1例にヘパリンRebound現象を認めた. 線維素溶解現象はイプシロンを予防的に投与しているためほとんどみられない. なお長時間灌流例は重症患者が多いため, 術後出血時間が延長し, 血小板数の減少, 機能の低下, TEGのr+kの延長, maの減少がみられ, プロトロンビン活性の減少, 血小板数減少はかなり持続する. しかし2時間以内の灌流例では, 常温群と比較して著変がない. また, ヘパリンを低体温下に中和すると末梢の循環不全のため, 凝固時間が延長し, 術後出血量を増加させる1因となるので注意を要する.
ISSN:0546-1448