II-P4-16 音声分析を用いた舌接触補助床の効果判定に関する試み

【目的】舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis;PAP)は舌機能の低下を認める症例に対して, 舌口蓋接触の改善を目的として適用される. PAPの効果に関してはこれまで様々な報告がなされており, 嚥下圧や送り込みなどの嚥下機能を改善させる効果が示されているが, PAPの効果を音声分析により示した報告は少ない. 今回, 舌切除術後に著明な構音障害を認めた患者に対し, PAPの装着前後における発声の変化を音声分析装置をもちいて評価し, 著明な構音機能改善効果を認めたので報告する. 【方法】左側舌扁平上皮癌に対し舌部分切除術および胸鎖乳突筋皮弁再建術を施行し, 術...

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Veröffentlicht in:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 2008, Vol.12 (3), p.464-465
Hauptverfasser: 石飛進吾, 緒方敏明, 西村潤也, 本多啓子, 小山善哉, 前田香代子, 濱口盛子, 鮎瀬てるみ, 野上朋幸, 吉田治志, 大井久美子
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis;PAP)は舌機能の低下を認める症例に対して, 舌口蓋接触の改善を目的として適用される. PAPの効果に関してはこれまで様々な報告がなされており, 嚥下圧や送り込みなどの嚥下機能を改善させる効果が示されているが, PAPの効果を音声分析により示した報告は少ない. 今回, 舌切除術後に著明な構音障害を認めた患者に対し, PAPの装着前後における発声の変化を音声分析装置をもちいて評価し, 著明な構音機能改善効果を認めたので報告する. 【方法】左側舌扁平上皮癌に対し舌部分切除術および胸鎖乳突筋皮弁再建術を施行し, 術後に著明な構音障害および摂食・嚥下障害が出現した69歳男性の症例に対し, PAPを作成した. 舌の挙上運動低下および高口蓋のため舌口蓋接触が著しく不良であり, 改善にはPAPの十分な厚みを確保する必要があった. 本症例では装置の口蓋部分を中空にすることで軽量化し, 十分な厚みを確保した. 構音機能の評価には音声分析装置Multi-Speech Model 3700を用い, スペクトル分析を行った, PAP装着時および非装着時における発音をスペクトログラムにより比較した. 【結果】PAP非装着時ではカ行の発音が不明瞭であり, 力行それぞれの発音に対するスペクトログラムにおいて声帯振動開始時間(voice onset time;VOT)は測定不能であった. 一方PAP装着時ではカ行の発音が明瞭になり, [ku], [ke], [ko]発音時のスペクトログラムにVOTが確認された. 考察 PAP装着による構音機能改善に関する評価は, 発話明瞭度などの方法を用いる方法が一般的であるが, 複数の評価者を必要とするなど煩雑な面があり, 摂食・嚥下障害の臨床場面において積極的に行われていない場合が多い. 本研究で用いた音声分析法は, 単独の評価者で実施でき, 記録された音声データは客観性, 再現性に優れており, PAP作成過程や装着後の効果判定に十分応用できる.
ISSN:1343-8441