全身ケアにより一命をとりとめた不顕性誤嚥の一例
【はじめに】高齢者の気道感染に不顕性誤嚥の関与が大きいことは, 周知のこととなってきているが, 対応が十分とはいえないケースも多い. 今回我々は, 予想以上に重度の嚥下障害が潜在していた症例を経験したので, 報告する. 【症例】80歳男性. 気管支喘息, 心房中隔欠損症術後の既往はあるが, ADL自立し, 外出もしていた. 上気道炎症状が持続し, 食欲低下にて, 99年1月13日当院入院. 入院時は, 体温37.4℃, SpO_2 95%, 胸部に呼気性wheese軽度聴取したが, 杖歩行は自立していた. しかし, 入院後, 治療にもかかわらず, 食欲不振, 嘔気, 発熱, 喘鳴が持続し, 徐...
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Veröffentlicht in: | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 1999, Vol.3 (2), p.92-93 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【はじめに】高齢者の気道感染に不顕性誤嚥の関与が大きいことは, 周知のこととなってきているが, 対応が十分とはいえないケースも多い. 今回我々は, 予想以上に重度の嚥下障害が潜在していた症例を経験したので, 報告する. 【症例】80歳男性. 気管支喘息, 心房中隔欠損症術後の既往はあるが, ADL自立し, 外出もしていた. 上気道炎症状が持続し, 食欲低下にて, 99年1月13日当院入院. 入院時は, 体温37.4℃, SpO_2 95%, 胸部に呼気性wheese軽度聴取したが, 杖歩行は自立していた. しかし, 入院後, 治療にもかかわらず, 食欲不振, 嘔気, 発熱, 喘鳴が持続し, 徐々に全身状態悪化. 肺炎, うっ血性心不全, 両側胸水を併発し, 夜間せん妄による点滴自己抜去, 排痰困難が出現して, 危険な状態となった. 起炎菌検査はすべて陰性であったが, 絶飲食, 口腔ケアの徹底, 向精神病薬投与, ステロイドホルモン投与等, 全身ケア・集中治療を施行したところ, 全身状態は改善に向かった. 食事再開にあたり, ビデオ嚥下造影(VF)・ビデオ嚥下内視鏡(VE)検査を施行したところ, 中・下咽頭の中等量の食塊残留と不顕性誤嚥を認め, 予想以上に重度の嚥下障害が存在することが判明した為, 定期的なVF・VE検査に基づいた段階的嚥下食と嚥下訓練を施行した. 経過中, 嚥下食の拒否や, 突然の嚥下困難・呼吸苦が生じたが, 緊急にVE・VF検査を施行して, 本人に説明し, 改善した. 全粥+3分菜ペースト状食の摂食が自立し, 3月22日杖歩行にて自宅退院した. 【考察】この患者は, 気管支喘息, 気道感染, うっ血性心不全の3つの病態が混在している状態と考えられた. 治療にも関わらず, 悪化していった原因としては, 不顕性誤嚥による持続感染が関与していた可能性が高い. 嚥下障害の存在に気づくのが遅れたのは, 認知障害・感覚障害にて, 典型的症状を呈さなかった為と考える. 嚥下障害の原因としては, 加齢及び, 全身状態悪化による脳代謝の低下を疑う. 高齢者の診療においては, 嚥下障害など, 中枢神経機能の低下をふまえた, 詳細な病歴聴取と観察, きめ細かな全身的ケアが重要である. |
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ISSN: | 1343-8441 |