踵骨に関する基礎的研究
【目的】踵骨は橈骨, 腰椎椎体とともに骨塩量の測定ポイントとして比較的よく測定される骨である. 骨塩量は骨粗鬆症の程度を表ししばしば骨の強度の指標として用いられ, 先行研究においても骨の強度と一定の相関があることは知られている. しかし骨の強度が骨の硬さ(剛性)を表しているのかという点に関しては現在のところ十分な検討はなされていない. 本研究の目的は屍体踵骨を用いて, 荷重-歪み曲線の傾き(K)を骨の剛性とし骨塩量と圧縮強度についての関係を明らかにし踵骨の剛性に関する骨塩量と圧縮強度の特性を明らかにすることである. 【対象と方法】屍体より採取した踵骨16個(右9個, 左7個)を周辺軟部組織除去...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.7-7 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 【目的】踵骨は橈骨, 腰椎椎体とともに骨塩量の測定ポイントとして比較的よく測定される骨である. 骨塩量は骨粗鬆症の程度を表ししばしば骨の強度の指標として用いられ, 先行研究においても骨の強度と一定の相関があることは知られている. しかし骨の強度が骨の硬さ(剛性)を表しているのかという点に関しては現在のところ十分な検討はなされていない. 本研究の目的は屍体踵骨を用いて, 荷重-歪み曲線の傾き(K)を骨の剛性とし骨塩量と圧縮強度についての関係を明らかにし踵骨の剛性に関する骨塩量と圧縮強度の特性を明らかにすることである. 【対象と方法】屍体より採取した踵骨16個(右9個, 左7個)を周辺軟部組織除去後(1)踵骨後関節面上端部の骨塩量をDXA法にて計測した. (2)踵骨をInmanによる距骨下関節の回旋軸を水平面に対して40°背屈位に歯科治療材料のレジンにて固定処理を行いr=10mmの鋼鉄性ポンチを用い荷重試験機(島津製作所製)にて圧縮試験(圧縮速度10mm/ms)を行った. 圧縮試験よりえられたデーターからは最大荷重量と荷重-歪み曲線に任意のポイントP_1 ~P_5 を設定し方程式K=ΣP^2 /ΣP△に代入しKを求めた. 得られたデータについて, それぞれ(1)Kと最大荷重量(2)Kと骨塩量(3)骨塩量と最大荷重量それぞれの関係における相関関係を調べた. 【結果】Kと骨塩量との関係, Kと最大荷重量との関係, 骨塩量と最大荷重量との関係いずれにおいても正の相関関係を認めた. これまで諸家の研究により骨塩量は骨強度に相関することは知られていたが, 骨塩量及び最大荷重量と骨の剛性においても一定の相関関係が存在するのではないかと思われる結果となった. 【考察】踵骨は形態学上扁平骨に属し薄い皮質骨の下に豊富な海面骨質を有している. 骨の強度を決定する因子としては骨塩量以外にミクロレベルの構築学的構造の関与が唱えられてはいるが, 骨塩量がその決定因子の一つであることは間違い無いようである. 今回骨の剛性の指標と仮定した荷重-歪み曲線の傾きKは, 骨の歪み率(剛性)を表しているもので, 骨塩量の低いものや骨折強度の低い骨では歪みが大きく(剛性が低い)反対に骨塩量の高いものや骨折強度の高い骨では歪みは少ない(剛性が高い)という特性を持つ事が結果より示唆された. 歪み率の違いが皮質骨質の厚みの違いによるものか, 海面骨質の構築学的な違いによるものかという点に関しては, 今回の研究では検証しておらず引き続き今後の検討課題である. また今回の研究では圧縮速度を10mm/msと比較的遅い速度にて試験を行ったため, より速い速度での挙動についても検証の余地があると考えられる. 【まとめ】今回の我々の実験結果からは, 骨の剛性の決定に関しても同様に骨塩量は関与している事を示唆する結果となった. 今後の課題は皮質骨, 海綿骨に分けた力学的, 構築学的検証, 及び圧縮速度を速めたときの挙動の検証である. |
---|---|
ISSN: | 0289-3770 |