害虫抵抗性遺伝子組換え作物が非標的節足動物に及ぼす影響

1.害虫抵抗性(殺虫)形質を導入した遺伝子組換え作物が非標的節足動物(主に昆虫類)に及ぼす影響に関する研究事例(2003年前半まで)を集約して整理した。2.地上部の天敵昆虫相、土壌生物相を含め、有害な影響が報告されたのは、すべて非選択条件による室内実験の結果であり、網室や野外でも同様な現象が実証された例は現時点では報告されていない。3.Bトキシン(Cry1やCry3グループ)を単独に導入した組換え作物に代わって、複数のBトキシンや新タイプの殺虫成分を導入した作物が開発されている。これらについては農薬製剤としての利用歴がほとんどないため、今後、より慎重な安全性確認試験が必要である。4.同様にレク...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:Nihon Seitai Gakkai shi 2004/04/20, Vol.54(1), pp.47-65
1. Verfasser: 白井, 洋一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:1.害虫抵抗性(殺虫)形質を導入した遺伝子組換え作物が非標的節足動物(主に昆虫類)に及ぼす影響に関する研究事例(2003年前半まで)を集約して整理した。2.地上部の天敵昆虫相、土壌生物相を含め、有害な影響が報告されたのは、すべて非選択条件による室内実験の結果であり、網室や野外でも同様な現象が実証された例は現時点では報告されていない。3.Bトキシン(Cry1やCry3グループ)を単独に導入した組換え作物に代わって、複数のBトキシンや新タイプの殺虫成分を導入した作物が開発されている。これらについては農薬製剤としての利用歴がほとんどないため、今後、より慎重な安全性確認試験が必要である。4.同様にレクチンや昆虫消化酵素阻害物質(インヒビター類)など植物成分由来の殺虫形質を導入した組換え作物についても、訪花昆虫類への影響を含めて商業栽培前により慎重な安全性確認試験を行う必要がある。5.土壌生物相への影響はどのような種を対象として調査すべきか、あるいは調査期間をどの程度とるべきかなど、調査方法自体に多くの問題点を抱えている。土壌中でのトキシンの残効期間を定量評価した上で調査対象種の絞り込みを行うなど、調査方法の再検討が必要であろう。6.現時点では生態影響に関する研究の発表源が組換え作物開発企業や研究者側に偏っている傾向がある。組換え作物の開発に直接係わっていない研究者らによる研究が蓄積されることによって、組換え作物が生態系に及ぼす影響の実態が明らかにされ、組換え作物に対して懸念や不安を持っている市民や研究者に対して、より信頼できる情報を提供することができるだろう。
ISSN:0021-5007
2424-127X
DOI:10.18960/seitai.54.1_47